催眠とは何か
催眠は、誰もが、日常的に体験している現象です。
会話に夢中になっているときやおもしろい本に没頭しているとき、周りの音が聞こえなくなっていたことに気づいたことはありませんか?
集中力が極度に高まった状態、それが催眠です。
テレビの催眠術ショーで、催眠術師にアヒルのまねをさせられるお客は、みな自発的にステージに上っています。嫌がる人に、催眠をかけることは、誰にもできません。すべての催眠は、自分自身で作り出す自己催眠だからです。
催眠下では、何が起こるのか。
催眠は、個人の注意関心と集中力に変化を引き起こします。注意関心の対象が狭い範囲に凝縮され、普通の時より、体験を生き生きと、実感できるようになるのです。催眠が、窓のない部屋の電気を消して、懐中電燈で部屋の中をみるようなものだといわれるのは、そのためです。
催眠下で、注意関心を向けて考えたり、想像したり、思い出したりしたことは、通常の意識状態のときより、ずっと鮮明に、生き生きと体験されます。その一方で、注意関心が注がれなかったことに関しては、ほとんど、なかったことのように忘れらることがあります。そのため、催眠から覚醒したとき、一時的に、自分がどこにいるのか、現実がどうなっているのか、自分が誰なのか、よくわからなくなることがあります。
催眠状態のもうひとつの特徴は、「意図的ではない」と本人が感じることです。 催眠を体験した人の多くが、催眠下での体験について、自分が、傍観者であるような気がしたと述べています。 例えば、催眠中に、手を上げるようにいわれると、腕をあげようと意識しなくても、自分の手が、ロボットの腕のように自然に、上昇していくような感じがするというのです。
この自動的な現象が、催眠体験のもっとも顕著な特徴です。
しかし、「意図的ではない」という感覚は、「無力感」とは、違います。本人がのぞめば、催眠療法士がどんな直接暗示をかけても、抵抗できますし、自分で、催眠状態から覚醒することさえ、できるということが、経験的に判明しています。
一般的に、人は、催眠下で、精神的な平静と身体的なリラックス感の両方を体験します。(リラックスは、催眠のための必要条件ではありません。人によっては、心身ともに緊迫したまま、深い催眠状態を体験することがあります。)
催眠下では、様々な、知覚変化も、よくおこります。人によっては、全身が、とてもぐったりと、重く感じられますが、人によっては、体がとても軽く、ほとんど、麻痺しているような、場合によっては、自分の体から抜け出ているような感覚を持つことがあります。浮いている、沈んでいる、回転している、ぴくぴくしているといった感覚が、しばしば報告されています。
催眠状態では、様々な心身の変化が起こります。催眠を心身の健康回復や療法に応用することができるのは、そのためです。例えば、催眠性無痛覚―催眠で痛みを遮断する―は、催眠下でおこなわれる暗示が、心の動きに影響を与え、体の知覚反応に変化を起こさせることから、可能になります。年齢退行は、人が、心の中で、過去の出来事を生き生きと、まるで再体験しているように詳細に再構築する現象で、遠隔記憶にアクセスすることで可能になります。自動書記は、その人の腕が、一時的に意識の管轄から離れ、潜在意識の中にあるものに反応して書けるようになる現象で、心の自動的な動きを促すことにより可能になります。投影法は、想像上のテレビスクリーンの上に現れる自分の問題を眺める方法で、催眠下で、創造性と想像力を最大限に引き出すことで、可能になります。最後に、後催眠暗示―目覚めた後に行うよう催眠下で与えられた指示―が、効果をあげるのは、自動感受性が、催眠下で、高まるからです。
催眠が、なぜ、医療の現場で、役に立つのか?
レモンを思い出すと、口の中につばが出てくるように、体は、頭で考えることに反応します。つまり、「傷口がどんどん治っていく」と思えば、傷口の治りが早くなるということです。
細胞や組織について詳細な知識を持っている臨床催眠療法士が、患者の集中力を高めた状態(催眠下)で、よりリアルに治癒の過程をイメージできるように患者を誘導すると、その効果は、さらに高まります。
催眠が、医療の現場で併用されるのは、そのためです。
催眠療法とはなにか?
催眠療法は、クライアントを悩ませている症状を緩和・解消するため、催眠下で、クライアントの中にある答えを導き出す方法です。
催眠下では、精神がリラックスするので、脳波が、活動時のベーター波からまどろみのアルファー波に変わり、いつもと違う脳の領域が活性化されます。そのため、覚醒時に、いくら考えても思いつかなかった選択肢が、ふと閃いたり、忘れてしまっていた体験を思い出すことができるようになります。
それらの情報を現状にどう役立てていけばいいのか、クライアントが自ら答えを見つけられるように、カウンセラーが随時、質問していきます。催眠下であっても、意識がなくなるわけではありませんから、クライアントは、普通に話せます。
催眠状態の感じ方
催眠体験には、個人差があります。ぼんやりとなにかを感じる程度の方もいらっしゃれば、臨場感のある色鮮やかな光景を体験される方もいらっしゃいます。
この差は、その人が、聴覚、視覚、触覚など、五感のうちのどの感覚を優位に使っているかによって決まります。
セッションの活用法
セッションで体験したことを大切な情報として、問題を多角的に考える材料にするよう心がけてください。
セッションは、「種まき」のようなものです。その種を大切に育て、望みの花を咲かせるのは、クライアントの仕事です。
また、セッション中に行われる誘導を録音いたしますから、セッションとセッションの間に、それをできるだけ頻繁に聞いてください。
繰り返し聞くことで、体が催眠状態に慣れるので、より早く、そして深く、催眠に入れるようになっていきます。
臨床催眠は、医療、看護の分野で幅広く活用されている脳科学に基づいた代替医療です。
アメリカ臨床催眠学会及び南カリフォルニア臨床催眠学会の会員である鶴田育子は、
- ストレスマネジメント
- メンタルトレーニング
- トラウマヒーリング
- 過敏性腸症候群の改善
- 不安の緩和
- 恐怖症の改善
- 睡眠障害の改善
- 痛みの緩和
- 癖の解消
- あがり、ステージフライト
を専門に行っています。
むっとしたり、カッとしたり、くよくよしたり、人間には実に様々な感情がある。できるものなら、ほのぼのと温かい気持ちで過ごせるに越したことはない。だから、体に悪そうな感情が起きたときは、意識的に、自分が、目の前の事態にどんな解釈を与えているのか分析してみる。こうすると、激情が、体を駆け抜ける頻度が減るからだ。
だが、頭を冷やして考え、納得できたことであっても、いざ再び、同じような事態に直面すると、やっぱり元の木阿弥という場合も、確かにある。これは、長い年月をかけて、繰り返し、繰り返し培われてきた思考と感情の密接なつながりが、太く、根深い回路になっているためである。
そんなとき、自己流解釈のしかたを理詰めで無理に変えようとすると、かえってオリジナルの解釈に加速度が加わり、気分が悪化しかねない。
たとえば、約束の時間に相手がやってこなかったとしよう。時計の針を見るたび、だんだん腹が立ってくる。次第に怒り心頭に達し、感情の嵐が渦をまく。そこで、「私は、怒っている、なぜだ」と一呼吸してから、分析を試みる。「もしかしたら、事故に巻き込まれたのかもしれない」という別の認識が生まれ、「そうだ、そうに違いない」と思えれば、いい。だが、時計の針を見ると、やっぱり、むらむら腹が立つ場合、「事故だ」と思い込もうとすると、「事故のはずがない」という内なる葛藤が感情の嵐に油を注ぎ、ついには、「だいたい、あいつは・・・」と過去まで持ち出し、怒りの焔がますます燃え上がることになる。
かように、古い回路はしぶとい。だから、古い回路を修正しようとするより、新しい回路を作って、それを育むことに精を出す方が手っ取り早いし、健全だ。
上記の例をとってみよう。待たされてイライラしているときに、携帯電話が鳴る。電話の主は、しばらく音信が途絶えていた学生時代の友だちだった。にわかに気持ちが明るくなって、会話が弾む。こんな思いがけぬ幸せが、相手の遅刻のおかげでおこることがあるかもしれないのが人生だ。だから、待ち合わせで、ムッとしそうになったら、「待っているのは、未知なる幸せ」といった自作のフレーズを心の中でつぶやくようにするのである。
念仏を唱えるように、決まった文句を繰り返していると、集中力が高まってくる。集中しているときの脳波は、アルファー波になっているので、暗示の効果が上がりやすい。
虹の七色を思い浮かべながら行うヨガの瞑想導入、「腕が重くなる、重くなっていく。足が重くなる、重くなっていく・・」とゆっくりと語りかけて、自律神経の機能を向上させようとする自律神経訓練法、スポーツ選手の間で盛んに使われているイメージ法、禁煙やダイエット・病気の回復力増強に貢献しているヒプノセラピーなど、暗示を利用する療法は多い。
これらの本格的な療法で実証されている暗示の効果を日常的に、自分で使いこなす方法が、自作のフレーズだ。
状況に応じて、決まり文句を繰り返していると、気持ちが明るくなっていく。決まり文句を作るときは、現在形で、そして、疑いようのない事実で構成すること。疑いの余地が少しでもあると、「そんなはずはない」という思いが頭を持ち上げ、葛藤の原因になるからだ。 例をいくつかあげてみよう。
「何とかなる。何とかできる自分がいる」
今、現在生きているということは、過去に絶体絶命と思える事態をなんとか乗り越えてきたという証拠である。だから、新たな困難に直面したときに使う。
「人間には、自然治癒力が備わっている」
体調が優れないとき、体に支障がでたたときに便利だ。祭日や連休で、医者が休みのときは、なおさら原因を勘ぐって気が滅入りがちだ。心配は体に悪い。だから、気持ちを心配からそらすためにも、この決まり文句が役立つ。
「今だけ、今だけ。明日は別の日」
日常の些細なイライラやクヨクヨがおきたときに使える。この苦しみは、5年後も続いているだろうかと考え、答えが否であれば、とりあえず、このフレーズでいける。
「一番よくなる。必ずうまくいく」
どうしても解決法が見つからず、無力感、絶望感を感じるときは、これが一番。あれこれ思いあぐねるときは、暗示の効果にゆだねてみるのもいいものだ。
日本商工会議所掲載 2005年 11月
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